発酵特集

RED x プロから学ぶ簡単家庭料理 シェフごはん 発酵特集 日本最大級の料理人コンペティションRED U-35(RYORININ's EMERGING DREAM)、2016年度入賞者が、発酵食材活用レシピを公開!
  • 井上和豊テーマ食材:「酢」
  • 成田陽平テーマ食材:「アンチョビ」
  • 桂有紀乃テーマ食材:「味噌」
  • 酒井研野テーマ食材:「ヨーグルト」
  • 藤尾康浩テーマ食材:「甘酒」

井上シェフのテーマ食材 「酢」

井上和豊シェフ

井上和豊シェフ

1981年8月13日、秋田県生まれ。
中国料理

szechwan restaurant 陳 料理長 (2017年10月現在)

岩手県の調理師専門学校卒業後、2001年四川飯店に就職。その年に開業した系列店『szechwan restaurant 陳』渋谷店のオープニングスタッフとして厨房に立ち、副料理長を経て2017年料理長に就任。2003年に「青年調理士第4回デザート部門」で銅賞を受賞して以来、数々のコンクールで入賞している。

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酢によって使い方を変え、料理に奥行きを与える。

《酢 その1》酸辣湯 〜酢とコショウのとろみスープ〜

「酢」は中国料理に欠かせない存在です。酸味だけでなくまろやかさ、旨味、コクなど、さまざまな風味をもたらしてくれます。もっと酢のいろいろな使い方を楽しんでもらえたらと思い、今回の食材に選びました。
酸辣湯(サンラータン)は麺料理のベースにもなっている人気のスープ。酸っぱくて辛いのが特長ですね。辛さを生み出すのは辣油と思われがちですが、実はコショウなんです。あのピリリとした刺激的な辛さが酢と調和して、おいしさを生み出します。
酢は米酢を使用しました。酸味をストレートに味わってほしいので、ベースとなるスープは、澄んでいることが大切です。煮込んでしまうと肉から出た脂が乳化してしまうので、必要以上に沸騰させず、具材は細切りに統一してさっと煮る程度に火を通し、仕上げに酢を加えて酸味を立たせます。
透き通ったスープは味わいも澄んでいて、そこにふわっと酸の香りがして、後からコショウのピリッとした辛さがきます。スープは干し貝柱や干しえびなどを使うこともありますが、レシピのように干し椎茸だけでも十分おいしくできます。

酢によって使い方を変え、料理に奥行きを与える。

《酢 その2》紅燜土鶏塊 〜もっちり濃厚!鶏肉の黒醋煮込み〜

中国では、酢を「醋」と書きます。米酢などの透き通った酢は「白醋」、黒褐色の黒酢が「黒醋」です。黒酢は一般的な酢と原料や製法が異なり、熟成しているので酸味が穏やかという特長があります。最後の仕上げではなく、黒酢を加えて食材を煮込むと、酸味は飛んでまろやかさが前面に表れ、スープとなじんで味のまとめ役になるんです。
実はこの一品、本国で衝撃を受けたスッポンの煮込み料理を鶏肉でアレンジしたものです。酢は、酸味を主張させない料理にもなくてはならない、いわば名脇役。コクを増す隠し味的な要素も持っていて、それはおいしい発見でした。しかも餅でとろみ付けしているんです。水溶き片栗粉とは違う、独特なまったり感がいい。
「燜」は、ふたをして煮詰めるという意味なんですが、短時間でできるように圧力鍋を活用したレシピにしました。圧力鍋がない場合は、ふたをしてグツグツ強火で煮立てて、素材を一体化させましょう。その間に黒酢が味をまとめ、仕上げの餅が溶けて旨味をとじ込めます。

さまざまな土地の食材で、自分なりの料理を表現したい。

年齢的に最後の挑戦だった2016の『RED U-35』では、ある意味開き直るような思いで、奇をてらわず自信をもって伝えられる自分なりの料理を表現しました。念願のグランプリ《レッドエッグ》をとれたことは大いなる励みです。周囲の反響も予想以上で、井上和豊という人間に注目していただける大きなチャンスになったと実感しています。今後もさまざまなことにチャレンジしたいというのが率直な気持ちです。
次に目指したいのは先輩シェフたちが金賞を獲得した、4年に一度の中国料理世界大会です。そしていずれは世界の地を巡り、そこで出合った食材で自分なりの料理を作り、たくさんの人に食べていただきたい。一料理人としての、大きな夢です。

井上シェフの「酢」レシピ

酸辣湯 〜酢とコショウのとろみスープ〜

特長

キュッと喉の奥を刺激する酢の香りに引き寄せられ、れんげで具をすくうと、細切りした豚肉やたけのこ、干し椎茸、絹ごし豆腐、そして春雨が勢ぞろいし、一口でさまざまな食感と風味をもたらします。ストレートな酸味に圧倒されますが、喉を抜けるとそれがスッキリとした爽やかさに。期待通りコショウの辛みがパッと放たれて、次のもうひと口を誘います。調味料は身近なものだけなのに、クセになる複雑なおいしさです。

酸辣湯 〜酢とコショウのとろみスープ〜

コツ・ポイント

酢の酸味とコショウの辛みをストレートに味わえるように、ベースは澄んだスープに仕上げます。具をグラグラと煮込むと肉から脂が出て乳化してしまうので、必要以上に沸騰させず、具材は細切りに統一してさっと煮て火を通します。酢は仕上げに加えて酸味を立たせましょう。

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紅燜土鶏塊 〜もっちり濃厚!鶏肉の黒醋煮込み〜

特長

圧力鍋で5分煮ただけとは思えない、素材の旨味とコクの一体感! 黒酢とチキンスープ、少量のオイスターソース、砂糖などで煮詰めたまろやかな煮汁がとろとろの餅にしみ込み、鶏肉やじゃがいも、れんこんに絡んで奥深い味わいです。餅のとろみはしっかりと食べごたえがあってお腹も満足。噛みしめていると時折出てくる長ねぎや生姜は、あえて粗みじんにして加えることで、こってりしたなかに爽やかな清涼を与えるアクセントになります。

紅燜土鶏塊 〜もっちり濃厚!鶏肉の黒醋煮込み〜

コツ・ポイント

味のまとめ役は黒酢。具材を煮込む段階で加えることで酸味は飛んでまろやかになり、スープとなじんで味をまとめます。煮込むときは圧力鍋を活用して時間短縮。圧力鍋がない場合は、土鍋にふたをしてグツグツ強火で煮立てて、素材を一体化させましょう。仕上げに餅を加えて、とろみ付けします。

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  • 文:須永久美
  • 写真:福田栄美子
RED RYORININ‘s EMERGING DREAM U-35

明日の才能、未知なる美味を発掘する

2013年に幕を開けた、新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティションRED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM)。夢と野望を抱く、新しい世代の、新しい価値観の料理人(クリエイター)を見いだし、世の中に後押ししていくため、これまでの料理コンテストとはまったく異なる視点で、日本の食業界の総力を挙げて開催する料理人コンペティションです。

脇屋友詞

2017年大会へのコメント

歴代のレッドエッグ受賞者を見れば明らかであるように、このコンペティションで問われるのは“基本”です。
それは、料理に対する知識や技量のみならず、社会人として身につけておくべき知識や礼儀なども含みます。
挑戦者には、奇をてらうことなくこの“基本”に忠実に、その上で“個”というものを表現していただきたいのです。
ためらっていては何も始まりません。とにかくチャレンジしてください。
若き才能の挑戦を待っています。

脇屋友詞

Wakiya一笑美茶樓 オーナーシェフ

RED U-35 プロジェクトメンバー

RED U-35 2017 審査員

  • 脇屋友詞

    審査員長

    脇屋友詞

    Wakiya一笑美茶樓
    オーナーシェフ

  • 落合務

    審査員

    落合務

    La BETTOLA
    オーナーシェフ

  • 田崎真也

    審査員

    田崎真也

    ソムリエ

  • 德岡邦夫

    審査員

    德岡邦夫

    京都 𠮷兆
    総料理長

  • 千住明

    審査員

    千住明

    作曲家

  • 辻芳樹

    審査員

    辻芳樹

    学校法人辻料理学館
    辻調理師専門学校
    理事長・校長

  • 鎧塚俊彦

    審査員

    鎧塚俊彦

    Toshi Yoroizuka
    オーナーシェフ

  • 狐野扶実子

    審査員

    狐野扶実子

    料理プロデューサー

  • 生江史伸

    審査員

    生江史伸

    レフェルヴェソンス
    シェフ

  • 黒木純

    審査員

    黒木純

    くろぎ
    主人

RED U-35 総合プロデューサー

  • 小山薫堂

    総合プロデューサー

    小山薫堂

    放送作家

RED U-35 発起人

  • 発起人

    岸朝子(故人)

    食生活ジャーナリスト

  • 発起人

    滝久雄

    株式会社ぐるなび
    代表取締役会長 CEO
    創業者