発酵特集(RED U-35)

発酵特集(RED U-35)

成田シェフのテーマ食材「アンチョビ」

日本料理では使わない素材を、調味料として。

《アンチョビ その1》アンチョビおから

実は、どの発酵食品をテーマ食材にするか、決めるまでだいぶ迷いました。アンチョビは日本料理では使わないし、フランス料理でもめったに使いません。同じように魚を発酵させて作る和の調味料の「魚醤」や「しょっつる」でもおいしく作れますが、それではちょっと面白くないなと思いまして。
アンチョビを選んだのは、普段日本料理では使われない食材だけれども、ポンと入れ込める素材だと感じたからです。アンチョビには塩分と独特の旨味があるので、まずは調味料としてその味を楽しめる料理を作ってみたいと思いました。おからは、店ではお出ししていない料理ですが、まかないでよく作る料理なんです。食べるとそれほどアンチョビの風味は感じませんが、まさに《かくし味》として、いい仕事をしてくれます。具の鶏肉とアンチョビの複雑な旨味がうまくまとまって、普通のおからよりも、より味わい深いおからに仕上がりました。
おかずによし、お酒のアテによし、調理も簡単ですので、ぜひ作ってみてください。

>日本料理では使わない素材を、調味料として。

《アンチョビ その2》鰯と新生姜の炊き込みご飯

アンチョビはカタクチイワシの塩漬けしたものですので、夏らしく、イキのいい鰯と新生姜を一緒に炊き込んでみました。アンチョビからいい旨味が出ますので、他の出汁を加えなくてもしっかりと味が入り、フレッシュな風味が楽しめるおいしい炊き込みご飯が出来上がりました。すべての材料を炊飯器に入れて炊き上げるだけの簡単料理です。
ポイントは、ごま油でアンチョビを弱火でゆっくりと煮溶かすことでしょうか。イタリア料理のパスタソースを作るときの手順と同じですね。この手間で塩分がまろやかになり、旨味を引き出します。ごま油の量が30ccと多めに感じますが、そのまま米と一緒に炊き込むので、出来上がりに油分はそれほど感じません。
土鍋や厚手の鍋を使い直火で炊く場合、鰯は最初からのせません。鍋を火にかけて水が沸騰した段階で米の上に並べて炊いたほうが、おいしく仕上がります。沸騰まで約10分、鰯を入れて弱火にして約8分炊けば完成です。

日本料理を土台にしながら、自分らしい表現を料理に。

私は東京とフランスで6年ほどフレンチの修業をしたのち、日本料理の世界に飛び込みました。経験こそ10年ありますが、日本料理の世界では、まだまだ新参者です。しかし『RED U-35』に参加し、審査員の方々をはじめ、志の高い素晴らしい料理人の方々と大勢出会い、言葉に表せないほどの刺激を受けました。まだまだ将来を語れるほどの経験はありませんが、この先もずっと私は、日本料理の料理人として成長していきたいと思っています。ただ、主軸は日本料理としても、フレンチの修業で得た経験は、料理を多角的に見る目を養ってくれました。それが私の強み、特徴になるのかな、と感じています。今後は日本料理を土台にしながら、自分らしい表現ができるように、技術と感性を鍛えていきたいと思っています。そして再び『RED U-35』にチャレンジして、グランプリ《レッドエッグ》を狙いたいです。

成田シェフの「アンチョビ」レシピ

  • アンチョビおから

    アンチョビおから
    アンチョビおから

    特長

    異なる食感と旨味を持つ、様々な具材。鶏ひき肉から出た上品な旨味とアンチョビからでる独特の風味を、おからがうまく吸収して、箸がどんどん進んでしまうおいしいおからです。ふっくらとした出来上がりで、塩分も控えめ。おばんさいの定番であるおからが、アンチョビの力でワンランク上のおいしさに。トッピングした青ゆずの皮の爽やかな香りに夏を感じます。

    ポイント

    具材はそれぞれ小さく切り揃え、出汁を入れる前に、アンチョビ入りの油で炒めます。
    おからをふっくらと炊き上げるには、たっぷり注いだ出汁を丁寧に煮含めて、水気を飛ばすこと。十分に煮含めないと、べしゃっとしたおからになってしまいます。

  • 鰯と新生姜の炊き込みご飯

    鰯と新生姜の炊き込みご飯
    鰯と新生姜の炊き込みご飯

    特長

    初夏から夏が旬の新生姜と鰯を組み合わせた、新生姜の爽やかな香りが楽しめる炊き込みご飯。出汁を使わず、アンチョビの旨味を生かして炊き上げていますが、アンチョビ特有の生臭さは消え、コクと味わいが引き出されています。アンチョビおからをおかずにしてもよく合います。あとはお漬物とお吸い物があれば、献立が完成!? 大満足の夏のごはんです。

    ポイント

    アンチョビの下ごしらえが大事なポイントです。ごま油を弱火にかけ、分量のアンチョビをゆっくり溶かすことで旨味を出し、塩気をまろやかに。香りがほのかで上品な太白ごま油を使いましょう。土鍋などを使って直火で炊く場合は、水が沸騰してから鰯をのせましょう。