発酵特集(RED U-35)

発酵特集(RED U-35)

桂シェフのテーマ食材「味噌」

食材の味を引き立たせ、旨味を増す味噌を使った料理。

《味噌 その1》ホイップ味噌バター

白味噌と赤味噌(辛味噌)という味わいが異なる味噌を使用した料理を、2種類作ってみました。味噌は日本の家庭には欠かせない伝統の調味料ですが、どんどん消費量が減っています。その一方で、医学的にも味噌は体に良い食材であると実証されてきています。味噌汁だけではない新しい食べ方を、洋食のやり方で提案したいと思いました。
味噌をはじめ、麹を使った発酵食品とバターの相性の良さには以前から注目していました。味噌とバターだけでもおいしいのですが、白味噌の甘味にヨーグルトを加えることで優しい酸味が増します。また、ホイップすることで風味が口の中に広がります。パンやパンケーキ、クラッカーなどの洋風の主食に、とてもよく合うディップです。
「ごはんと味噌汁」という定番と同じように、「パンと味噌バター」という組み合わせが、週に数回日本の食卓にあがる日があってもよいかと思います(笑)。

食材の味を引き立たせ、旨味を増す味噌を使った料理。

《味噌 その2》米茄子のステーキ 赤ワイン田舎味噌

2014年、私はニューヨークにあるフレンチレストラン『Bouley(ブーレイ)』に研修に行きました。今でも年に数回現地に料理を学びに行っています。ニューヨークのトップシェフであるブーレイさんは、毎日自ら鰹節と昆布で出汁をひくなど、和の食材を巧みに料理に取り入れていらっしゃる方で、日本人の私も驚かされることが度々ありました。例えば、赤ワインとポルト酒を煮詰め、味噌を加えたソースでナスをグラタン仕立てにして、羊料理のつけ合わせにしていたことがあるのですが、味噌と赤ワインはびっくりするほどよく合うことを知りました。
この料理は、見た目はナスの肉味噌田楽風ですが、食べていただければ、えっ!和食ではない、と驚かれる料理だと思います。ぜひ赤ワインを傾けながら、パンと一緒に味わっていただきたいですね。

日本の各地で出会う未知の食材に刺激され続けたい。

昨年『RED U35』では、発酵の料理がテーマでしたが、とりわけ日本古来の味噌やお酢など発酵食品に興味が尽きない私には、願ってもないテーマでした。今も休みがあれば日本各地に出かけ、その地元ならではの調味料や食材との出会いを探し求めています。未知の食材に出会うと、料理のアイデアが湧いてきますし、料理人として最も大事な機会だと感じております。料理人である前にひとりの人間として、地球と人々が育む恵みに感謝をして、これからも各地を飛び回り成長していきたいです。

桂シェフの「味噌」レシピ

  • ホイップ味噌バター

    ホイップ味噌バター
    ホイップ味噌バター

    特長

    西京味噌とも呼ばれ、関西ではポピュラーな白味噌は、麹のまろやかな甘みが特徴の美しい色合いの味噌。その上品な味わいとバターに、ほんのりとした酸味を感じさせるヨーグルトの相性の良さに驚かされる軽いディップです。シンプルなバゲットはもちろん、ナッツやドライフルーツ入りのパンにもぴったり。またパンケーキやクラッカーにもよく合います。

    ポイント

    バターを柔らかくすることが、おいしく作るいちばんのコツ。慌ててレンジなどで溶かすと分離してしまうので、室温に置いてマヨネーズほどの柔らかさにしてから、味噌やヨーグルトと混ぜること。保存もできます。

  • 米茄子のステーキ 赤ワイン田舎味噌

    米茄子のステーキ 赤ワイン田舎味噌
    米茄子のステーキ 赤ワイン田舎味噌

    特長

    こんがり焼いた米茄子に肉味噌……見た目は和食でおなじみ、茄子の田楽風ですが、一口食べてビックリ。赤ワインの風味と熟成味噌の旨味をしっかりと吸収した肉味噌がふくよかで、止まらないおいしさです。和食のカタチ+フレンチの繊細な手法の幸せなコラボレーションが息づくひと皿です。

    ポイント

    おいしく仕上げるコツは、ひき肉をカラカラになるまで水分を飛ばして炒めること。そこへ赤ワインを注ぐと、肉が一気に膨らんでワインの風味が閉じ込められ、色も赤みがかったきれいな肉味噌に。