米料理特集(RED U-35)

米料理特集(RED U-35)

倉田シェフのテーマ食材「白米」と「道明寺粉」

素材の最もおいしいところを引き出すのが仕事。

《米料理》椀 子持ち鮎の焼きおにぎり 松茸

私自身がとても好きな子持ちの鮎とご飯を組み合わせた料理です。ご飯そのものにも味と香りがありますが、香りのある食材と組み合わせると、その良い香りをご飯が受け止めて、よりいっそう香りを広げてくれるんですよね。《香りの魚》とも呼ばれる鮎の混ぜご飯は、お米にぴったりの調理法ですし、特にこの時期の子持ち鮎は、旨味と香りが格段に良いので、この料理をご紹介しました。塩焼きして骨を抜いた鮎を、おいしい卵も肝も皮も全部ほぐして使います。そして丸く形をまとめた鮎の混ぜご飯を表面だけ香ばしく焼き、出汁を注いでいただくお吸い物仕立てにしましたが、おにぎりとして食べてもおいしいですよ。この時期の鮎は脂がのっているので、その脂がまたご飯にしみて、冷めてもおいしいです。たくさん作ってお弁当にしても喜ばれると思います。店でもお吸い物としてお出ししすると、鮎ってこんなにおいしい魚なんですね、とよく言われるので、ぜひご家庭でも作ってみてください。

素材の最もおいしいところを引き出すのが仕事。

《道明寺粉の料理》白河道明寺粉揚げ 蕪霙餡掛け

この料理は秋の名残の食材《栗、銀杏》と、冬のはしりの食材《白子、蕪》を組み合わせた料理です。季節が出会う時期にしかできない食材を合わせるのは、とても日本料理らしい方法ですし、良い食材が揃えば、料理人が手を加えるのは、ほんの少しなんです。その時季にしか味わえない味を組み合わせ、そして楽しんでいただくことに神経を使うのも料理人の仕事、そんな思いでこの料理をご紹介しました。白身の魚・白河(シロアマダイ)の揚げ衣に使ったのが、道明寺粉です。桜餅になど和菓子によく使われる道明寺粉は、蒸したもち米を乾燥させてから挽いた伝統の保存食ですが、揚げ衣にすると固くならずにカリカリに仕上がりので、店でもよく使います。ただし、そのまま使うのではなく、カラ煎りしてからミキサーでパウダー状にしてから使っています。野菜などを揚げても中の水分を残し、表面だけカリッと香ばしく揚がるので、とても重宝する食材だと思います。

今日来てくださるお客様のために、いい仕事をしていきたい。

私にとって一番大事なのは、今日来てくださるお客様に料理をおいしく召し上がっていただくこと。それに尽きると感じています。だから日々同じことをきちんとやり遂げ、積み重ねることが最も重要だと思っています。当たり前のことですが、そういう考えは独立して2年半たった今、ますます大事なものになってきました。やっぱり、料理人にとって料理を作ることが一番大事ですし、毎日毎日を大切にちゃんと仕事していると、いろんな方に助けられたり、チャンスを与えてもらったりしています。明日からも、今日と同じように、いい仕事をしていきます。

倉田シェフの「白米」と「道明寺粉」レシピ

  • 椀 子持ち鮎の焼きおにぎり 松茸

    椀 子持ち鮎の焼きおにぎり 松茸
    椀 子持ち鮎の焼きおにぎり 松茸

    特長

    鮎は塩焼きで食べることが多い魚ですが、丁寧にほぐした身を混ぜご飯にすると、鮎の香りと焼いた皮の香ばしさまでがふんわりとごはんに移り、お米の美味しさがさらに引き立ちます。鯛や秋刀魚の炊きご飯とはひと味違う川魚の味わいが、松茸の香りと素晴らしいハーモニー。お出汁を注いでリゾット風にご飯をくずしながら食べると、すべての素材の香りがじっくりと味わえる料理になっています。

    ポイント

    ご飯は残りご飯でも良いのですが、お吸い物にするので、固めに炊いたご飯のほうがよりおいしく出来上がります。塩焼きした鮎の身の部分を飾りようにすると見栄えが良いので、その分はほぐさないで取っておくこと。出汁は熱々のものを注いでください。

  • 白河道明寺粉揚げ 蕪霙餡掛け

    白河道明寺粉揚げ 蕪霙餡掛け
    白河道明寺粉揚げ 蕪霙餡掛け

    特長

    秋の味覚と初冬の味覚が一皿に美しく収まった和食の粋を感じる料理です。細かな道明寺粉でクリスピーに揚げた白身の魚と、ほんのり焼き上げた白子、そして甘みと独特の苦みがある裏ごしした蕪と、それぞれの食感が楽しめます。さらに塩茹でした栗を裏ごししたパウダー状のトッピングで加わる、栗の優しい甘さも絶妙です。

    ポイント

    道明寺粉をフライパンでゆっくりカラ煎りして水分を飛ばした後、ミキサーでパウダー状にする。揚げ衣にするととてもきめ細かな口当たりになる。白河はとても貴重な魚で手に入りにくいので、同じように身の柔らかいサワラなどで作ってもよい。